オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。記念すべき第1回は「お店」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
◆更新履歴は「お知らせ」に載せています。
Mike Petrucci / StockSnap.io
↑ドアには "Shop"、その下の貼り紙には "Store Hours" の文字(クリックで拡大可)。shop と store の違いは一体何?
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「店」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. bar
2. booth
3. boutique
4. cafe
5. establishment
6. joint
7. kiosk
8. office
9. outlet
10. parlor
11. place
12. restaurant
13. salon
14. shop
15. stall
16. store
bab.la(辞書)
BEBEBLANCHECOCO
CUERBO(辞書)
英語トピ
英辞郎 on the WEB(辞書)
英会話スクール比較ナビ
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、主な訳語だけでもこれだけの数になりました。この中で圧倒的に多かったのはどちらにも「商店 (=商品を売るお店)」の意味がある shop と store です。この2語の違いは一体何でしょうか?
以下では、その他の訳語や百貨店の売り場の表現も含め、「お店」の英語について分かりやすく説明します。
Shop と Store の違い(アメリカ vs イギリス)
まず、shop と store の違いを説明した日本語のウェブページは数多くありますが、その中で説明が見られなかったイギリスでの言葉の使い分けも含めてこの2語の違いを簡単に説明すると次のようになります。
アメリカ
加工などの作業をしたり、その結果でき上がったものをその場で売る次のような専門店は shop と呼び、それ以外のお店は store と呼ぶのが普通。
- 男性の散髪をする barber shop(理髪店/床屋)
- コーヒーを入れて提供する coffee shop(珈琲店)
- 自転車を修理・販売する bike shop(自転車屋)
shop には「作業場」、store には「保管場所」という意味があるため、作業(して販売)するお店は shop、仕入れた商品を倉庫に保管してそのまま売るお店は store と覚えるといいと思います。また、上のような業種のお店は規模が小さいのが普通ですが、それとは関係なく shop を単に「小さなお店」と説明するアメリカ人もいます(確かに上の定義に当てはまらない既製品のお土産物を売る小さなお店は gift shop です)。
イギリス
次のようにお店の種別名や店名に store が使われている場合でも、消費者にとって「商店」は基本的に shop。ただし品揃えが豊富な大型店は store と呼ぶほうが適切と感じる人が多くなっている。
- 多種の商品を専門の売り場に分けて売る大型店の department store(デパート)
- 日曜大工用品や園芸用品を売る大型店の DIY store(ホームセンター)
- 食品や日用品を売る "○○ Store" と自称する小さめのお店(コンビニや雑貨店)
イギリスで shop は「商店」や「作業場」、store は「保管場所」などに使われていましたが、department store (デパート) の登場で商店に store も使われるようになりました。理由は大型店だからではなく、お店側がアメリカの表現を使っただけでデパートも「商店」のため shop です(イギリスのCollins英英辞書やOxford英英辞書が department store を "a large shop" と説明しているのはこのためです)。
日本でも例えば友達に「ドラッグストアでバイトしてる」と言われて「どこにあるストア?」ではなく「どこにあるお店?」や「どこにあるドラッグストア?」と聞くように(この drug store もアメリカ英語)、イギリスでも「店」という意味での store は当時はあくまで商店の種別名の一部として使われていたのです。
skeeze / Pixabay.com
↑かなり地味(?)なイギリス最大の老舗高級デパートの Harrods も基本的には shop。
その後、DIY store (ホームセンター) など同じく多種の商品を売る大型店も一般的になったためか、イギリスでは次第にそのような大きなお店を store と呼ぶことを適切と感じる人が増え、今では大型店だけでなくお店の規模が小さくても大手有名ブランドのチェーン店などであれば「そのお店」と言いたい場合に "the shop" ではなく "the store" と表現しても違和感を感じない人が多くなっている印象です。
一方、その他の小さなお店の場合は shop よりも立派に聞こえる(と考えるお店が多い)store をお店側が店名や貼り紙や店内放送に使っても、消費者はそのお店を単に "a/the shop" と呼ぶのが普通です。アメリカ英語の convenience store (コンビニ) も使われていますが、消費者の多くはそのようなお店に行くことを普通は "I'm going to the shop(s)" と表現します(1店舗でもこのように複数形を使うことがあります)。
Chris Jenner / Shutterstock.com
↑田舎にある village shop と呼ばれるタイプのお店はこのように store を複数形にしているものもある(この store(s) は「店」の意味ではなく置いている在庫 (stock(s)) のことらしい)。
デパート内に Shop/Store はある?
shop と store の違いを説明した日本語のウェブページの中にはデパート内の1つ1つのお店を shop や store と呼ぶと説明しているものもありますが、お店に見えてもそこで働いているのがデパートの従業員であればそれは shop でも store でもなく「○○売り場」の「売り場」を意味する department (部門) です。
一方、多くのお店で構成された建物は「ショッピングモール」で、アメリカでは (shopping) mall、イギリスでは shopping centre と呼ぶのが普通です(これもお店側などはアメリカを真似て mall と呼ぶことが多いようです)。建物内にお店がテナントとして一部存在するデパートもありますが、このスタイルは比較的新しいためそれを shop/store と呼ぶかは人によって違います(絶対にそう呼ばず店名で呼ぶと言う人もいます)。
Rawpixel / Rawpixel.com
↑「デパートはいくつもの department (部門) でできてるお店だから department store なのよ」「そうだったんだ~」
Shop/Store 以外の「お店」
最後に、今回見つかった「お店」のその他の訳語について簡単にまとめておきたいと思います(※このページの投稿後に詳細を説明したページを公開したものは、カッコ内にそのページへのリンクを貼っています)。
booth, kiosk, stall: 売店/出店/屋台/露店系のお店。(第183回)
boutique: ブティック。(第169回)
establishment: お店の他に会社、学校、病院などにも使われる「設立物」を意味する硬い言葉。
joint, outlet, place: 飲食店や商店などいろいろなお店に使える言葉。(第121回)
office: 代理店など事務所系のお店。他にも agency などが使える。(第158回)
parlor, salon: サロン系のお店。(第13回)
このようにお店を表す英語はいろいろありますが、これらをすべて「お店」という1つの言葉で表せてしまう日本語は本当に便利だと思います(※他にもこのような例はこのブログでたくさん紹介しています)。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで shop と store のアメリカとイギリスでの違いやその他の「お店」の英語の違いが分かりやすくなったかもしれません。
日本では携帯ショップなどで「このショップで働きたいです」と言っても違和感はありませんが、ドラッグストアやコンビニ(エンスストア)で「このストアで働きたいです」と言うとかなり違和感があるのでやめておきましょう...