オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第16回は「ショートカットキー」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
nattanan23 / Pixabay.com
↑ショートカットキーを使いこなして生産性をグングン上げる人。
まず、今回取り上げるパソコン用語の「ショートカットキー」とは、例えばマウスを使うと3秒かかる操作をキーボード上のキー(1つまたは複数)を押すだけで瞬時に実行できる「近道 (=ショートカット) させてくれるキー」のことです。具体的には、ワープロソフトの Microsoft Word であれば作成中の文書を上書き保存したいときに Ctrl キーを押しながら S キーを押すと瞬時に上書き保存ができます。
では、この「ショートカットキー」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか? 見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
shortcut key
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、「ショートカットキー」と同じ shortcut key が主な訳語として見つかりました。この表現は実際に英語圏で使われているのでしょうか?
以下では、覚えておくと役立つかもしれない似た表現も含め、「ショートカットキー」の英語について分かりやすく説明します。
「ショートカットキー」は英語で何と言う?
まず、「ショートカットキー」は英語で keyboard shortcut と表現するのが普通です。日本語でも「キーボードショートカット」と表現しているウェブページは結構ありますが、その多くは欧米のウェブサイトやマニュアルの日本語版のようで、英語での呼び名をそのまま(正しく)カタカナ化しているのだと思います(日本語版ウィキペディアの『ショートカットキー』のページにも「キーボードショートカット」は載っています)。
検索エンジンで「ショートカットキー」と「キーボードショートカット」をそれぞれ入力して検索すると、圧倒的に「ショートカットキー」のほうが多く見つかります。これは、日本ではやや長ったらしい「キーボードショートカット」より言いやすい「ショートカットキー」のほうが好まれていることを表していると思います。
今回調べた辞書・サイトで「ショートカットキー」の英語に keyboard shortcut を載せているものは2つだけありましたが、ページ冒頭の主な英訳セクションに載せているものは1つだけでした(『Glosbe』)。
Shortcut Key は間違い?
shortcut key という表現もMicrosoft社のウェブサイトなどで使われているため間違いではありませんが、普段の会話やインターネットの投稿、ソフトウェアのマニュアルなどで一般的に使われている表現は keyboard shortcut です(shortcut key という表現は聞いたことがない人もいます)。また、英語版ウィキペディアの『Keyboard shortcut』のページにも shortcut key という表現は載っていません。
shortcut も key も可算名詞 (数えられる名詞) ですが、先ほどの上書き保存の例のように Ctrl と S という2つのキーを一緒に押す場合にその組み合わせ( Ctrl + S )を1つの「キー」と見なすのは違和感があるため、やはり keyboard shortcut という表現を使って "The keyboard shortcut for Save is Ctrl+S" (保存のキーボードショートカットは Ctrl+S です) のように表現するのがいいでしょう。
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↑上書き保存のキーを思い出せないショートカットの女性。
Key Binding や Key Assignment とは何?
実行したい操作・機能とそれを実行するためのキーの「結び付け (組み合わせ)」を英語では key binding と呼び、日本語では「キーバインド」(または英語と同じ「キーバインディング」) と表現されています。
bind という動詞は「結び付ける」という意味ですが、特定の操作・機能をキーボード上のキーに「割り当てる (assign)」ことと同じため、key binding と key assignment(日本語では「キーアサイン」)は基本的に同じことを意味します(「キーの結び付け」と「キーの割り当て」の違いだけです)。
なお、ショートカットキーが keyboard shortcut ではなく key binding や key assignment と表現されている場合は、キーの結び付け/割り当てをユーザーが自由にカスタマイズできることが多いです。
「ショートカットキー」のその他の呼び名
ショートカットキーとキーバインド/キーアサインは意味が少し違いましたが、ショートカットキーを意味する英語として keyboard shortcut と shortcut key の他に accelerator key、access key、hot key を挙げているウェブページもあります。
Microsoft社によると access key はショートカットキーとは違うらしく、例えば Word や Excel で Alt キーを押すとメニューバーにアルファベットが表示されますが、この状態で F キーを押すと「ファイル」タブにアクセスできることから F キーがこの際の access key だと説明しています。
残りの accelerator key と hot key は keyboard shortcut と同じ意味とされていますが、accelerator key という表現を使う人は少ないと思います。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「ショートカットキー」の一般的な英語表現が多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。
これからは勤務先などでショートカットキーを「キーボードショートカット」と呼ぶと、周りから「さてはこの人はバイリンガルだな?」と思われて評価が上がるかもしれません...