#72 『中小企業』は英語で何と言う?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第72回は「中小企業」の英語についてです。

◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。

mark stay / Shutterstock.com

↑「お前ら中小企業は何でそんなに英語表記がたくさんあるんだー!!」「ごめんなさーい!」


まず、中~小規模の企業を意味する「中小企業」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。

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「中小企業」
インターネット上の主な英語訳
1. small and medium(-size(d)) businesses/companies/enterprises/firms
2. small and mid-size(d) businesses/companies/enterprises/firms
3. small to medium(-size(d)) businesses/companies/enterprises/firms
4. small to mid-size(d) businesses/companies/enterprises/firms
5. smaller businesses/companies/enterprises/firms
訳語を載せた辞書・サイト
bab.la(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「中小企業 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、「中」と「企業」に該当する部分をできるだけ1つにまとめ、すべて複数形に統一しても訳語が5つになりました。この他に日本語の「中小」と同じ順番の medium and/to small という表現を載せているサイトもありましたが、この順番は普通ではないため一覧には含めていません。

以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった各表現の使い分けも含め、「中小企業」の英語について分かりやすく説明します。

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SME vs SMB

まず、「大企業」に対する「中小企業」という企業カテゴリーの名称として標準的な表現と言えるのが small and medium-sized enterprises で、英語版ウィキペディアの同名のページには世界銀行、国連、世界貿易機関などの世界的機関が省略形の SME (複数形は SMEs) を使っているとの記載があります。

一方、small and medium-sized businesses (SMBs) もこのカテゴリーの名称として使われますが、EUでは今説明した SME が普通のためこれはアメリカ寄りの表現だと言えるでしょう。なお、SMB はデータやITインフラの管理をパートタイム社員や外部業者が行うのに対し、SME はフルタイム社員が行うと説明している英語のウェブサイトもありますが、それが本当だとしても多くの人はそのような違いは知らないと思います。

「企業」の部分に「会社」の companies や firms も使われますが、この場合は「中小企業」というカテゴリー名ではなく「中・小規模の会社」という表現のため SMCSMF と略すことはまずないでしょう。また、大企業より小さめという意味で smaller enterprises/businesses のように表現することもあります。そして大企業は large enterprise で、これも large company や big business と表現することがあります。

Solntseva Nadezhda / Shutterstock.com

↑「助けてくれ~ぃ、サメに食われちまうよー」「だから大企業に就職しろって言ったんだよー」

Medium, Medium-Size(d), Mid-Size(d)

さて、「中小企業」の英語表現があれほど多くなる最大の理由が「中」の部分に当たる mediummedium-size(d)mid-size(d) ですが、これは好みの問題でどれも間違いとは言えないでしょう。

ただ、日本語でもサイズ・量の話だということが明確な「小」「大」と違って「中」が長さ、高さ、重さなどいろいろな場合の「中くらい」を意味するように、英語の medium もサイズ・量以外にも使われる単語のため単に "medium enterprise" と表現すると変に感じるネイティブスピーカーもいます。そのため、やはり先ほどの "-sized" を付けて表現するのがいいでしょう。

Soloma / Shutterstock.com

↑"medium enterprise" と表現しても違和感のない人 (右下の人) もいれば、"-sized" がないと変に感じる人もいるのだ。

中小企業1社は英語でどう表現する?

さて、これで「中小企業」には small and medium-sized enterprises またはその省略形の SMEs だけを使えばいいと言いたいところですが、日本語と違って英語は単数と複数で表現が変わる面倒な言語です。

例えば、「多くの中小企業が...」と言いたい場合は "Many small and medium-sized enterprises..." と表現できますが、「中小企業で働きたい」のように中~小規模の企業1社を意味する場合は "I want to work for small and medium-sized enterprises" と言うと複数の中小企業で働く意味になってしまいます。

aurielaki / Shutterstock.com

↑「僕は大中企業で働きたいんです!」「普通に『大』と『中小』で分けてくれないかなー」

だからといって単数形で "I want to work for a small and medium-sized enterprise" と表現すると、今度は「小規模で中規模な企業」という矛盾した意味になってしまいます。そこで、この場合は andto に変えて "a small to medium-sized enterprise" (小~中規模の企業) と表現するか、or を使って "a small or medium-sized enterprise" (小規模または中規模の企業) と表現するほうがいいでしょう。

今回調べた辞書・サイトの中には a と and の組み合わせを訳語に載せてしまっているものがあったり、small and mediumsmall to medium の違いを説明しているものがありませんでしたが、先ほどの SME(s) または SMB(s) という省略形を使えばこのような面倒なことを考える必要はなくなります。ただ、残念ながら状況や相手によってこれらの省略形ではすぐに理解されない場合があります。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「中小企業」の英語表現の違いや注意点が多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

中小企業にお勤めの方は、先ほどのイラストのように海はサメだらけで危険ですので、くれぐれも船が沈まないよう注意しましょう(フリーランスはもっと危険ですが...)。

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