#134 『スナック(菓子)』の英語は本当に snack (food)?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第134回は「スナック」の英語についてです。

◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。

buritora / Shutterstock.com

↑「あー、もうスナックを英語で何て言えばいいのかわかんないよー」(じゃあこのページを読みましょう...)


まず、今回取り上げる「スナック」とはお店の「スナックバー」ではなく「スナック菓子」のことですが、この意味での「スナック」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。

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「スナック(菓子)」
インターネット上の主な英語訳
1. bite
2. collation
3. munchie
4. nosh
5. snack

6. snack food (esp. potato chips, popcorn, etc.)
訳語を載せた辞書・サイト
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英語・英会話の情報ランド
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「スナック 英語」「スナック菓子 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、主に6つの訳語が見つかりました。この中で圧倒的に多かったのは日本語の「スナック」の元になっている snack と snack food ですが、これらは本当に「スナック」と同じ意味なのでしょうか?

以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「スナック菓子」の英語について分かりやすく説明します。

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スナック ≠ Snack (Food)

まず、オンライン百科事典のコトバンクによると snack はもともとポテトチップスやポップコーンなど塩味の効いた袋菓子を意味する言葉だったようですが、それが本当だとしても今はその意味に限定されません。

では、今回圧倒的に多く見つかった snack と snack food はそれぞれ何を意味するのでしょうか? 簡単に説明すると次のようになります。

snack food
昼食や夕食の一部としてではなく間食として食べるのが普通の食品。

具体的な食品については、次のA~Cに分類すると分かりやすくなります。

A. 日本で「スナック」と呼ばれているタイプのお菓子
ポテトチップス、ポップコーン、キャラメルコーンなど
B. A以外で賞味期限が長めで(少なくとも未開封であれば)冷蔵や冷凍保存が不要な間食用食品
クッキー/ビスケット、エナジーバー、ナッツ、ビーフジャーキー、ドライフルーツなど
C. 賞味期限が短かったり、冷蔵/冷凍保存が必要な間食用食品
ドーナッツ、アイスクリーム、ヨーグルト、ゼリーなど

後で説明するように例えばスーパー/ネットスーパーではAとBの一部またはすべてをまとめて "Snacks" と表示するなど、food を付けないことが多いため次の snack と混同しないよう注意が必要です。

snack
1回の間食/軽食。例えばおやつにナッツとドーナッツという2つのスナックフード (two snack foods) を食べた場合と昨日の夕食の残りの唐揚げ (これは snack food ではない) を食べた場合のどちらも1回の間食 (a snack) を食べたことになる。

このようにどちらも日本語の「スナック」よりも範囲が広い言葉のため、これらだけでは日本の「スナック」と同じ意味になりません。もちろん今回見つかった主な訳語の6番目にある "snack food (esp. potato chips, popcorn, etc.)" のように説明することもできますが、何かもっとシンプルな表現はないのでしょうか?

Rawpixel / Rawpixel.com

↑「どうやら『スナック』は snack と違うらしいぞ」「日本語ってそういうの多いわよね...」

Bite, Collation, Munchie, Nosh

さて、今回見つかった主な訳語には bitecollationmunchienosh という単語も含まれていましたが、これらはそれぞれ何を意味するのでしょうか? 簡単に説明すると次のようになります。

bite
動詞では「かむ」や「かみつく」、名詞では「かむこと」「ひとかじり」「(すぐに食べ終えられる) 軽食」などを意味する単語。
collation
主な英和辞書には「照合」や「校合」だけでなく「断食中の軽食」や単なる「軽食」としても載っているものの、単なる軽食の意味で使う人は(少なくとも今の時代は)まずいない。
munchie
複数形であれば「食べ物 (特におやつ類)」や「空腹感」の口語として使われることがある単語。
nosh
アメリカでは「軽食」の口語、イギリスでは「食事/軽食」の口語として使われることがある単語。

つまり、これらの言葉も日本語の「スナック」とは意味が少し違うということです。

「スナック」は英語で何と言う?

では、結局「スナック」は英語で何と言うのでしょうか?

アメリカやイギリスではこのタイプのお菓子を1つのカテゴリーとして分けていませんが、短い言葉であえて表現すると salty, crunchy snack (噛むと「サクサク」など硬めの音が鳴る塩味のスナック) または saltycrunchy の語順を逆にした crunchy, salty snack になるでしょう。そのような食感でもキャラメルコーンのように「甘い」と感じる例外はありますが、「スナック」と言えば普通は塩味ベースだと思います。

Rawpixel / Rawpixel.com

↑「このサクサク感はマジでやばいぞ」「僕もそっちにしておけばよかったかなぁ...」

今回調べた辞書・サイトで「スナック(菓子)」の英語にこれらの表現を載せているものはありませんでしたが、例えば『Dr. Ann's Favorite Salty, Crunchy Snacks』というアメリカの医師によるYouTube動画や『The Crunchy, Salty Snack Every Super Bowl Party Needs』というアメリカのフードライターの記事に登場するお菓子はチップス系やポップコーン系など日本の「スナック」と同じタイプです。

salty を付けずに crunchy snack と表現すると野菜スティックなどにも該当してしまい、逆に crunchy を付けずに salty snack と表現するとビーフジャーキーなどにも該当してしまうため、やはり両方付ける必要があるでしょう。salty で crunchy な snack にはせんべいや塩味ビスケットもありますが、普通はポテトチップスやポップコーンをイメージさせるため次のように使えば日本の「スナック」とほぼ同じ意味になります。

Many people love salty, crunchy snacks.  (スナックが大好きな人はたくさんいます。)
What is your favo(u)rite crunchy, salty snack?
  (一番好きなスナックは何ですか?)
※favorite はアメリカ、favourite はイギリスのスペルです。

一方、例えば「何かスナック食べる?」と聞きたいときに "Have some salty, crunchy snacks?" のように尋ねると少し説明的すぎるのと同時に漠然とした感じもあるため、この場合は具体的なスナックの種別名を使うほうがいいでしょう。例えばポテトチップスは (potato) chips (アメリカ) または (potato) crisps (イギリス)、ポップコーンとキャラメルコーンは日本語と同じ popcorn と caramel corn になります。

また、先ほどの snack food のAとBのタイプはスーパーの店内で同じエリアに陳列するのが普通ですが、日本の「スナック」と同じタイプのAを "Chips""Salty Snacks""Popcorn" と3つに分類しているお店(アメリカ)や "Crisps""Savoury Snacks" と2つに分類しているお店(イギリス)などがあり、日本よりも分け方が複雑です(savoury は「塩味/ピリ辛の」という意味で、アメリカでのスペルは savory です)。

photocritical / Shutterstock.com

↑このイギリスのお店の表示では上から "Biscuits" (ビスケット/クッキー)、"Crisps" (ポテトチップス)、"Nuts" (ナッツ) と分類され、その他のお菓子系スナックフードがまとめて "Snacks" と表現されている。

一方、ネットスーパーの場合はアメリカでは "Snacks" カテゴリーの中にAとBのタイプを細かく分類しているものが多く、イギリスでは "Food Cupboard" (食品戸棚) というカテゴリーの中にAとBだけでなく戸棚に保管しておくようなその他の食品類(シリアル、乾麺、ジャムなど)を含めているものが多くあります。

日本語の「スナック」はお菓子の1つのタイプとして意味がかなり明確ですが、英語の snack は状況や場所によって意味が変わるかなり面倒な言葉だと言えるでしょう。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した日本の「スナック」の最適な英語表現が多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

このブログでは「スナック」のように日本語と英語で意味が少し違う「ワインクーラー」「メタルラック」「レースカーテン」「マドラー」「スイーツ」「キャンディー」「ファミレス」なども取り上げてきましたので、時間のあるときにスナックでも食べながら目を通してみましょう...

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