オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第50回は「お土産」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
Rawpixel / Rawpixel.com
↑「ほーら、プレゼントだよ~」「どこに旅行に行ってたのー?」
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「お土産」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. gift
2. keepsake
3. memento
4. present
5. reminder
6. souvenir
7. token
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英語発音クリニック
英語ぷらす
英辞郎 on the WEB(辞書)
英会話カフェ&英会話スクール 大阪ペラペライングリッシュ講師YUIのブログ
英会話ハイウェイ
英これナビ
English Hacker
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
MYスキ英語
日刊英語ライフ
Reverso Context(辞書)
トラベルタウンズ
つながる英語.com
Weblio(辞書)
Weblio英会話コラム
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、「お土産」の英語として有名な souvenir を含むいろいろな訳語が見つかりました。この中で私たちが使う「お土産」という言葉の意味を正しく表現しているものはどれでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「お土産」の英語について分かりやすく説明します。
「お土産」には主に2つの意味がある
まず、「お土産」という日本語には「旅先や外出先から持ち帰る品物」と「他人の家を訪れるときに持参する贈り物」という主に2つの意味がありますが、今回説明するのは1つめの意味から「外出先」を除いた「旅先から持ち帰る品物」という意味でのお土産です。
「お土産」の漢字は「その土地の産物」を意味する「土産 (どさん)」と同じため「お土産 (おみやげ)」という言葉は自分で楽しむために持ち帰る品物にも使えそうに思えますが、実はこの「土産」は当て字であり(詳細はインターネットで調べることができます)、私たちが使う「お土産」という言葉は自分以外の誰かのために持ち帰る品物を意味するのが普通です。
「お土産」に Souvenir を使わないほうがいい4つの理由
さて、「お土産」の英語には今回見つかった主な訳語のようにいくつかの表現がありますが、できれば1~2つだけ覚えて使いたいのではないでしょうか? その場合、「お土産」の英語として有名な souvenir は次の4つの理由により使わないほうがいいと言えます(あくまで表現を1~2つだけ覚えたい人の場合です)。
ネイティブスピーカーや英語の先生の中には souvenir は「その旅の思い出として自分用に持ち帰るもの」と考える人たちがいます(これは本来正しいはずですが、他人用の場合でもOKとする人たちもいます)。日本語の「お土産」は自分以外の誰かのために持ち帰る品物を意味するのが普通のため、「souvenir は自分用」と考えるこれらの人たちに誤りと思われないようこの単語は使わないほうがいいと言えます。
飲食物のお土産は、長持ちするものであれば消費するときに商品名やパッケージのイラストなどがその土地のこと(他人からもらったお土産の場合はその人がその土地へ行ったこと)を思い出させてくれるため souvenir と考える人もいます。日本国内のお土産の多くは食品で、相手に渡した後に何も思い出させることなくすぐに消費されることが多いため、「お土産=souvenir」と覚えないほうがいいと言えます。
土産物店にはその土地と全く関係のない商品が売られていることもありますが、その土地を思い出させてくれるものとは言えないためそれを souvenir とは考えないのが普通です。一方、私たちの多くはそのようなものでも「お土産」と呼んで人に渡すため、「お土産=souvenir」と覚えないほうがいいと言えます。
これはおまけですが、上の一覧を見れば分かるようにスペルと発音が一番難しいのは souvenir です。
leungchopan / Shutterstock.com
↑「この土地と何の関係もないけど、可愛いから妹にあげるお土産はこれにしよう」
Gift や Present は「お土産」とは限らない
さて、今回見つかった主な訳語の中で souvenir と同じく多かったのが gift と present です。これらは本当に「お土産」を意味するのでしょうか?
例えば、"What does omiyage mean?" (お土産とは何ですか?) と尋ねられて "It's a gift" と答えたら、それは旅先から持ち帰ったお土産や他人の家を訪れる際に持参するお土産だけでなく、近所で買って郵送する贈り物などにも該当してしまいます。また、例えば友人や職場の同僚に "I have a present for you" と伝えると単に「プレゼントがあります」という意味になってしまい、「お土産」の意味にはなりません。
つまり、旅先から持ち帰ったお土産を gift や present という単語だけで表せるのは旅していたことを相手が知っている状況に限られるため、その他の状況では "It's a gift/present from my trip to {地名}" や "It's a gift/present we brought back from {地名}" のように表現する必要があるということです。
Gift と Present の違い
では、「贈り物」や「プレゼント」という意味での gift と present の違いは一体何でしょうか?
present はクリスマスパーティーや誕生日会などで使うことが多いカジュアルな表現、gift は若干硬い響きがするためちょっとしたプレゼントから改まった場面にまで使える表現と考えるネイティブスピーカーが多いようです。また、gift は与えられた才能や愛情など手で触れることができないものにも使われるため、present は gift の一部と考えるのが正しいと言えるでしょう。
お土産の場合はどちらも同じ意味ですが、どちらを使うのがその状況で適切と感じるかは人によって違うこともあるため、判断が難しいときはどちらも使わないのが一番いいと言えるでしょう。
Jacob Lund / Shutterstock.com
↑「本当に久しぶり~」「ほら、ギフトかプレゼントかわかんないけどワイン持ってきたわよ」
「お土産」は英語で何と言う?
では、「お土産」という日本語の意味を英語で説明する場合はどうすればいいのでしょうか? この場合は「旅先から持ち帰った贈り物」という意味で "It's a gift brought back from a trip" のように表現するのがいいでしょう。一方、実際に私たちが「お土産」という言葉を使う場面では、わざわざ gift や present を使わなくても次のように使い慣れた単語で簡単に「お土産」を表現できてしまいます。
お土産は何にしようかな。⇒ I wonder what to buy for them.
お土産買ってきてくれなかったの? ⇒ Nothing for me?
つまり、ここまで説明してきたさまざまな点を考えると、お土産をあげたりもらったりする際は souvenir、gift、present ではなく something や this/these(またはその品物の名称)などを使って表現するのが最も簡単かつ無難と言えるでしょう。
なお、今回見つかった主な訳語の中にある keepsake、memento、reminder、token にはすべて「人や出来事などを思い出させてくれるもの」という意味がありますが、先ほど書いたとおり日本国内のお土産の多くはすぐに消費される食品のため、これらの単語も「お土産」の英語として覚えないほうがいいかもしれません。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「お土産」の英語表現の違いが多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。
土産物店とギフトショップはそれぞれ英語で souvenir shop と gift shop と表現されるため、親しい人のために持ち帰るものであればカジュアルな響きの present のほうが適切と思い込んで "Present Shop" というお店を永遠と探し回らないよう注意しましょう...