オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第157回はカスタマーサービスやテクニカルサポートの「担当者」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
Teddy / Rawpixel.com
↑「お客様、本日はどのようなお問い合わせでしょうか?」「いいから責任者出せー!」
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「担当者」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. contact (person)
2. (contact) personnel
3. officer
4. person responsible
5. rep / representative
6. responsible party
7. staff(s)
8. (the) one in charge
9. (the) person in charge / PIC
bab.la(辞書)
Berlitz Blog
DMM英会話なんてuKnow?
英語ぷらす
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
MYスキ英語
Reverso Context(辞書)
TRANS.Biz
VoiceTube
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
WURK
ご覧のとおり、いろいろな訳語が見つかりました。この中で最も多かったのは日本で「担当者」の英語としてよく使われる (the) person in charge です。今回取り上げるカスタマーサービス (お客様サービス) やテクニカルサポート (技術サポート) の担当者にもこの表現を使えばいいのでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、カスタマーサービスやテクニカルサポートの「担当者」の英語について分かりやすく説明します。
Representative, Agent, Associate
まず、カスタマーサービス、テクニカルサポート、ヘルプデスクなどの担当者には「代理人」や「代議士」を意味する representative、同じく「代理人」や「仲介者」などの意味もある agent、「仲間」や「提携者」を意味する associate という単語がよく使われます(どの表現を使うかは企業側の自由です)。
representative は字数が多くて発音も「レプリゼンタティヴ」と言いにくいものの、口語では短く rep (レップ) と略せます。agent は字数が最初から少なく発音も日本語の「エージェント」に近くて簡単な「エイジェント」です。そしてスペルを間違えそうな associate は「アソウシエット」のように発音します。
つまり、これらの職業について説明する場合などに口語を使わず字数や発音の負担をできるだけ少なくしたければ、agent を使って例えば「ヘルプデスク担当者」であれば help desk agent と表現できます。
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↑agent はこのような real estate agent (不動産業者 ※イギリスでは real は不要) の他、secret agent (国のスパイ) や chemical agent (化学物質) などにも使われる単語。
なお、「カスタマーサービス/サポート」は customer service/support、「ユーザーサポート」も user support と表現が日本語と英語で同じですが、「テクニカルサポート」は technical を口語では短く tech (テック) と略せます。もっと短くしたい場合は最初だけ略語を使わずに書き、2回目からは例えば customer service representative(s) であれば CSR(s)、help desk agent(s) は HDA(s) と頭文字に略せます。
Person In Charge や Staff も使える?
さて、今説明した representative、agent、associate は主に企業側が使う表現のため、ユーザー側も同じように使うとは限りません。今回見つかった「担当者」の英語には representative は含まれていましたが、その他の訳語はこれらのコールセンター系の担当者に使えるのでしょうか?
contact は「連絡先担当者」の意味に限定される言葉で、「役員」などに使われる officer はこのようなコールセンター系の担当者には適しません。person in charge や one in charge は例えば "He is in charge of customer service" (彼はカスタマーサービスの担当です) のように使うフレーズですが、これは person responsible と同じく「責任者」を意味してしまうので注意しましょう。
一方、personnel/staff (職員/スタッフ) は例えばカスタマーサポート担当の人たちを customer support personnel/staff と表現できますが、どちらも1名の場合は他の単語を足す必要があるのでやや面倒です。
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↑staff や personnel はこの写真のようにスタッフ複数名や全体を意味する言葉(詳細は #145 『スタッフ (1名/複数名/全体)』は英語で何と言う? を参照)。
そもそもカスタマーサービスやテクニカルサポートの人たちを「担当者」と呼ぶ機会がどれくらいあるのか分かりませんが、次のような場面では英語では someone (誰か/人/者 (もの)) という言葉がよく使われます(日本語でも「カスタマーサービスの人/者」のように表現することはあると思います)。
Someone from the/our Help Desk will contact you. (ヘルプデスクの者から連絡します。)
(Someone from) tech support called me. (テクニカルサポート(の人)から電話があった。)
なお、会話では関係ないですが、メールなどでそのチーム名や部署名が正式名だということを明確にしたい場合は2文目の Help Desk のように頭文字を大文字にします。例えばチーム名が「テクニカルサポート」であれば Technical Support になりますが、この場合は Help Desk と違って「デスク」や「センター」に該当する単語が含まれていないため、the を付ける必要がありません(もちろん「その」と言いたい場合は必要)。
また、3文目のように日本語でも英語でも「の人/者」の部分を省略して表現できる場合も多いと思います。この場合、省略してもその窓口の誰かから電話があったという意味になります。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「担当者」の英語表現の違いが分かりやすくなったかもしれません。
何か重大な問題が発生してサポート窓口に電話する際は、いくらストレスが溜まっていても冒頭の写真のように「いいから責任者出せー!」といきなり怒鳴るのはやめましょう...