#94 『対象者』は英語で何と言う?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第94回は「対象者」の英語についてです。

◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
◆更新履歴は「お知らせ」に載せています。

Teddy / Rawpixel.com

↑左の人が「対象者」。さて英語では何と言う?


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「対象者」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。

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「対象者」
インターネット上の主な英語訳
1. eligible applicant(s)
2. eligible person
3. object person
4. person eligible
5. subject
6. target group
7. target persons
訳語を載せた辞書・サイト
bab.la(辞書)
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
教えて!goo
音楽療法かけはしの会

Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「対象者 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、主に7つの訳語が見つかりました。これらは eligiblesubject/objecttarget という3つのグループに分けられます。それぞれどのような意味での「対象者」なのでしょうか?

以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「対象者」の英語について分かりやすく説明します。

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英語では短い名詞(句)で表さない場合も多い

まず、日本語では特定の人たちを「~者」と短く表現するのが普通ですが、例えば第172回の「うつ病患者」のように英語ではそのように短く表さない場合も多くあります。今回の「対象者」も例えばワクチン接種の案内書の項目を日本語であれば普通はシンプルに「対象者」と書きますが、英語では次のように書くのが普通です。

Who can get vaccinated  (ワクチンを受けられる人)
Who can get a COVID-19 vaccine  (COVID-19のワクチンを受けられる人)
※最後に「?」を付けて「ワクチンを受けられるのは誰?」という疑問文スタイルで書かれることもあります。

また、例えば「このワクチンの対象者は18才以上です」という文は、for (~のための) という前置詞を使って "This vaccine is for people aged 18 and older" のように簡単に表現できてしまいます。

では、今回見つかった主な訳語で使われている eligible などの単語は何を意味するのでしょうか?

Rawpixel / Rawpixel.com

↑ワクチン接種の対象者はあくまで接種を「受けられる人」。このように強制してはいけない...

Eligible

eligible は「適格である」や「~する資格がある (※取得する資格ではなく条件を満たしていること)」を意味する形容詞のため、eligible personperson eligible (person who is eligible の略) は「適格者」という意味での「対象者」です(この eligible という形容詞の同義語に entitled や qualified があります)。

ただ、案内書などの項目の「対象者」はこの単語を使う場合でも次のように表現するのが普通です。

Who is eligible for the vaccine?  (ワクチン接種を受ける資格があるのは誰?)

一方、例えば「参加する資格のある人」という意味での「対象者」はシンプルに eligible participant(s)、同じく「応募/志願する資格のある人」という意味での「対象者」もシンプルに eligible applicant(s) と表現できます(ただし文脈によっては何か別の条件を満たしている参加者や応募者の意味にもなり得ます)。

Subject, Object

この subjectobject は文法の話であればそれぞれ「主語」と「目的語」を意味しますが、「対象者」として使う場合は「実験や研究の対象となる人」を意味します。この分野については詳しくありませんが、臨床試験の対象である被験者は subject(s) と呼ぶのが普通だと思います。

Image Point Fr / Shutterstock.com

↑「私はあなた方の target なのですね...」「いえ、あなたは subject だから安心してちょうだい」

Target

この target (=ターゲット) は「標的」や「目標」を意味します。例えば製品を開発する際にメーカーはどのような消費者を標的とするか考えますが、その人たちを target という単語を使って表します。

今回見つかった主な訳語には target group (対象グループ) と target persons (対象者たち) が含まれていますが、対象がユーザーであれば target users、客/消費者であれば target customers/consumerstarget audience と表現できます(「聴衆」などを意味する audience は単数形で多くの人を指します)。

また、試作品などを消費者に評価してもらう市場調査では、例えば「週1回以上運動する人」などの条件に該当する調査対象者を target population (標的とする母集団) と表現します。これは「標的」という意味での対象者であり、「参加資格者」という意味での対象者は先ほどの eligible participant(s) になります。

Bakhtiar Zein / Shutterstock.com

↑標的とする母集団 (target population) の中から一定数をサンプルとして抽出し、その中でさらに細かい条件をクリアした人たちだけが実際の調査に参加できる適格者 (eligible participants) となる。

「対象者」のその他の英語

最後に、「対象者」の英語に上で説明した eligibletarget を使わないほうがいい場合もあります。

例えば上の市場調査の例では、適格者だけが選ばれて調査が始まった段階以降はもう「非対象者」は1人もいませんが、参加者/回答者を「対象者」と呼び続けてしまう人が日本の市場調査業界には多くいます。この場合、英語では単に participant(s) (参加者) や respondent(s) (回答者) と表現します。同じく先ほどの eligible applicant(s) も単に applicant(s) (応募者/志願者) と表現するほうが適切な場合があると思います。

また、candidate (候補者) も「対象者」に使うことができ、例えばリストラの対象(候補)となっている人たちを candidates for layoffs や layoff candidates と表現できます。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか?「対象者」の英語に target population や最後の candidate を載せている辞書・サイトはありませんでしたので、少なくとも辞書は載せておくべきでしょう(このページの公開後に candidate はビジネス英語・用語集のサイトに載りました)。

他にも「高級感」「おしゃれ」「評価」「こだわり」「お知らせ」「荷物」「魅力的」など、英語では表現がいくつもに分かれるのに日本語では同じ1つの言葉で表せてしまうことが本当に多いと思います。

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