オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第131回は「テレワーク」「リモートワーク」「在宅勤務」「在宅ワーク」「内職」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
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↑「テレワークで働きたいだと? 要するに在宅勤務ってことだろ?」(テレワークは在宅とは限りません...)
まず、似ている言葉の「テレワーク」と「リモートワーク」、そして同じく似ている「在宅勤務」と「在宅ワーク」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでそれぞれどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の英語訳
1. remote work
2. telecommuting
3. telework(ing)
4. work(ing) from home
インターネット上の英語訳
1. remote work(ing)
2. telecommuting
3. working at home
4. working remotely
インターネット上の主な英語訳
1. homework(ing)
2. telecommuting
3. telework(ing)
4. work(ing) at home
5. work(ing) from home
インターネット上の英語訳
1. outwork
2. piecework that can be done at home
3. work from home (job) / working from home
bab.la(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
ハイキャリア
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
日刊英語ライフ
Oggi.jp
Reverso Context(辞書)
シゴトバ
Uniwords English
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、それぞれ訳語がいくつか見つかりました(「在宅勤務」は数が多かったため主なものだけを載せています)。似ている telework(ing) と telecommuting の違いや work at home と work from home の違いは一体何でしょうか? また、そもそもこれらの日本語の違いは何でしょうか?
以下では、「在宅ワーカー」や「内職従事者」の表現も含め、「テレワーク」「リモートワーク」「在宅勤務」「在宅ワーク」「内職」の英語について分かりやすく説明します。
「テレワーク」「リモートワーク」「在宅勤務」「在宅ワーク」「内職」の違い
まず、この5つの日本語について説明したウェブサイトや主な国語辞書の定義を見ると、それぞれ次のような違いがあると言えます。
メール、チャット、SNS、スマートスピーカーなどの情報通信技術を意味する「ICT (=Information and Communication Technology)」を使って遠隔 (tele-) で仕事をすること(またはその仕事)。次のタイプに分けられる(1a、1bなどの番号/アルファベットは当サイトで独自に割り当てたもの)。
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1. 雇用型テレワーク(企業に雇われている人が行うテレワーク)
- 1a. 自宅で勤務先の仕事をする「在宅勤務」
- 1b. 電車内や出先など移動中に勤務先の仕事をする「モバイルワーク」(というより「モバイル勤務」)
- 1c. サテライトオフィスやスポットオフィスで勤務先の仕事をする「施設利用型勤務」
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2. 自営型テレワーク(個人事業主 (フリーランスなど) や小規模事業者が行うテレワーク)
- 2a. 主に専業性が高い仕事を行う「SOHO」※独立自営の度合いが高い
- 2b. 主に他の人が代わって行うことが容易な仕事を行う「内職副業型勤務」※独立自営の度合いが薄い
「テレワーク」と違って総務省による言葉の定義はされておらず、単に「遠隔労働」を意味する言葉(つまり言葉としては「テレワーク」と全く同じ意味)。普通はICTを使うため、実際の働き方もテレワークと同じ(またはITエンジニアやウェブデザイナーなどの専門職の人がする遠隔労働のイメージ)。
テレワークの1aのタイプ。
個人事業主 (フリーランスなど) が自宅で仕事をすること(またはその仕事)。企業に雇われていないためテレワークの1aの「在宅勤務」とは違う。受注時と納品時だけでなくその間も受注元企業とICTを使ってやり取りする仕事であれば、「自営型テレワーク (2a/2b)」に含まれると思われる(というより受注時と納品時のやり取り程度しかしない個人事業主の仕事はそもそも「テレワーク」ではないと思う)。
企業に雇われており、テレワークの2bの「内職副業型勤務」と違ってICTを使わない手作業や軽作業(シール貼り、袋詰め、部品の組み立てなど)を自宅で行うこと(またはその仕事)。ほとんどは出来高制。
テレワークの2aと2bの説明は分かりにくいですが(誤った解釈をしないよう総務省の定義をほぼそのまま載せました)、2bは「自営型」でありながら「自営の度合いが薄い」という理由で自営業者扱いされておらず、まるで受注元企業の社員かのように「内職副業型勤務」と表現されています(「勤務」という日本語は「会社などに勤めて仕事をすること」を意味します)。
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↑「ええ、電話を使うお仕事だから『テレワーク』なんですよ」(違うのでこのページを読んで勉強してください...)
「テレワーク」は英語で何と言う?(Telework(ing) vs Telecommuting)
さて、今回見つかった「テレワーク」の4つの英語のうち、似ている telework(ing) と telecommuting の違いは一体何でしょうか?
tele- の部分は「遠隔の」という意味のため、この2語はそれぞれ「遠隔労働」と「遠隔通勤」を意味します。telework(ing) と telecommuting の違いを説明している人たちの間でも解釈が多少異なったり、どちらも同じ意味で使っているウェブサイトがアメリカにもイギリスにもあることから、この2語には使い分けるのに値する違いはないと言っていいと思います(どちらか一方の言葉しか聞いたことがない人も多いようです)。
また、アメリカでは telework(ing) よりも telecommuting と表現するほうが普通ですが、イギリスにはこの「遠隔通勤」という表現に違和感を感じる人もいるため、できれば「テレワーク」には次のように日本語と同じ telework (テレワーク(する)) や teleworking (テレワークすること) を使うほうがいいと思います。
(テレワークで働いたことはありますか?)
(テレワーク(すること)はどんどん一般的になっています。)
なお、今回見つかった「テレワーク」の英語にはもっと自然で誰にでも通じる work(ing) from home も含まれていますが(自宅で働くことを意味するその他の表現については最後に説明します)、テレワークは自宅以外でもできるため、普段から自宅以外でテレワークをしている人はこの表現を使わないよう注意しましょう。
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↑「アイム ワーキング フロム ホーム!」「No, you aren't...」
Remote Work(ing) と Telework(ing)/Telecommuting の違い
次は、remote work(ing) と telework(ing)/telecommuting の違いについてです。日本語の「リモートワーク」は「テレワークと同じ」や「ITエンジニアやウェブデザイナーなどの専門職の人がする遠隔労働のイメージ」と先ほど書きましたが、英語の場合は何か違いがあるのでしょうか?
アメリカではテレワークを telework(ing) よりも telecommuting と表現するほうが普通のため、リモートワークとの違いを説明したアメリカのウェブサイトも "Remote Work vs. Telecommuting" のように比較しています。そして「どちらも同じように使われることがよくある」としながらも、この2語には次のニュアンスの違いがあると説明しています(イギリスでも同様の違いを説明しているサイトがあります)。
出社できないほど会社から離れた所に在住/滞在して遠隔労働すること。遠隔での採用も多い。
重要な会議などには出られるよう、会社から遠くない所に住んで遠隔労働 (正確には遠隔通勤) すること。
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↑この人は telecommuter や teleworker ではなく remote worker らしい。
「在宅勤務」「在宅ワーク」「内職」は英語で何と言う?
最後は、どれも自宅で作業をする「在宅勤務」「在宅ワーク」「内職」の英語についてです。
前置詞だけが違う work(ing) at home と work(ing) from home は全く同じ意味と考える人もいますが、違いがあると考える人は主に次のように区別しています。
自宅で仕事をすること。「勤務先」と呼べる場所がない場合(例えばフリーランス)にも該当する。
自宅から勤務先のネットワークにアクセスしたり、勤務先にいる同僚とやり取りして仕事をすること。
この違いがあると考える場合は「自宅で仕事をすること (=在宅勤務と在宅ワークの両方に該当)」が working at home で「在宅勤務」が working from home になりますが、勤務先と呼べる場所がない場合でも「事業の拠点を自宅にしている」という意味で work from home と表現する人もいます。なお、この表現は企業で使われることが多いためか WFH と略されることがよくあります。
自宅で仕事をする人を表現する場合は、「在宅勤務者」は home-based (non-piecework) employee (自宅で(出来高制ではない)仕事をする社員)、「在宅ワーカー」は home-based self-employed worker (自宅で働く個人事業主)、内職ワーカーは home-based piecework employee (自宅で出来高制の仕事をする社員) と表現するといいかもしれません(個人事業主や自営業の英語は前回の第130回で説明しています)。
一方、仕事自体を表現する場合は「在宅ワーク」が home-based job for self-employed workers (個人事業主向けの在宅の仕事)、「内職」が piecework (job) for home-based employees (在宅の従業員向けの出来高制の仕事) になるでしょう。「在宅勤務」の仕事は work-from-home job になります。
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↑造花の内職をする人。このような出来高制の仕事は piecework (job) と表現する。
その他、今回見つかった「在宅勤務」の英語に含まれている homework には「在宅の(特に出来高制の)仕事」の意味もありますが、学校の「宿題」と間違われる可能性があったり、自宅で働く人を homeworker と表現すると home care worker (ホームヘルパー) と誤解される可能性があるので注意が必要です。
「在宅ワーク」の英語に含まれている outwork は、イギリスで「外注の仕事」や「下請けの仕事」という意味もあるので「在宅ワーク」には使わないほうがいいでしょう。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これでテレワークや在宅の仕事の英語表現の違いが分かりやすくなったかもしれません。
在宅の仕事に憧れている方は、収入が不安定でいつ仕事がなくなるか分からない (自分のような)「在宅ワーカー」や「自営型テレワーカー」ではなく、企業に雇われて「在宅勤務」をしている「雇用型テレワーカー」に憧れるようにしましょう...