#6 「店員」の英語は本当に salesperson や store clerk?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第6回は「店員」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

Rudy van der Veen / Skitterphoto.com

↑AI化とキャッシュレス化でそのうち店員も現金も消えるかもしれないが、それでも店員は英語で何と言うか覚えておこう。


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「店員」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

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「店員」
インターネット上の主な英語訳
1. sales assistant
2. sales associate
3. sales clerk
4. salesperson
5. sales staff

6. shop assistant
7. shop/store clerk
8. store employee
9. store staff (member)
10. store worker
訳語が見つかった辞書・サイト
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英語・英会話の情報ランド
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
教えて!goo
楽英学
Reverso Context(辞書)
weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「店員 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、俗語などを除いた主な訳語だけでもこれだけの数になりました。これでは一体どれを使えばいいか迷ってしまうと思います。なぜ1つの日本語に対してこれだけ多くの英語表現があるのでしょうか?

以下では、今回調べた辞書・サイトで説明が見られなかった各表現の違いも含め、「店員」の英語について分かりやすく説明します。

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Sales とは

まず、上の訳語の中には sales という単語を使ったものが半分含まれています。sales は「販売/売り上げ」の他に「営業」という意味もありますが、この「営業」は「営業停止」などに使われる「事業を営むこと」ではなく、「営業担当者」と呼ばれる人たちが行う販売・顧客獲得活動 (売り込み/セールス) を意味します。

この「販売」と「営業」は意味が少し違うようで、「営業」は企業に売り込むこと、「販売」は消費者に直接売ることのためデパートやスーパーでの仕事が「販売職」と説明しているウェブサイトもありますが、英語では(というより日本語でも)消費者に直接売るそのような業種は retail (小売り) であり、相手が企業でも消費者でも「売ること (販売)」は sales です(つまり販売職は小売業の内外どちらにも存在します)。

なお、日本語の「セールス」と違い、英語の sales は「セイルズ」のように発音します。

AR Images / Shutterstock.com

↑日本の企業には「営業部」「販売部」「マーケティング部」の3つが存在する場合があるが、英語では「営業」も「販売」も "sales" のため "Sales & Marketing" となっている。

Salesperson とは誰?

売り上げや契約の件数が多ければ多いほどその月の給料が上がる歩合制の店員は salesperson と表現するのが最適です。この単語は英和辞書で「営業担当者」や「販売員」と訳されていますが、「営業」という日本語はそもそも「事業を営むこと」を意味すべきだと思いますのでここでは「販売員」としておきましょう。

自分の目の前にいる店員が歩合制かどうかは私たち買い物客には分からないため、積極的に商品を勧めてくるような店員であれば salesperson と呼ぶことができます(「店長」などもっと適切な呼び名がない場合に限ります)。ただ、実際の会話ではわざわざこの「販売員」という硬い表現を使うことはあまりないと思います。

男性と女性の販売員をそれぞれ salesmansaleswoman と呼ぶのは問題ありませんが、名前も顔も知らない販売員の場合や求人広告などで男女どちらにも該当する条件の場合は、どちらかの表現だけを使うと差別と見なされるため salesperson (複数形は通常 salespeople) と表現するのが今は普通です。なお、これらの単語は sales の後にスペースを入れて2語に分けて書く人もいます。

ただ、外回りでセールスする訪問販売員なども salesperson のため、この表現は必ずしも「店員」を意味するものではありません。また、もちろん salesperson と呼べるような店員が全くいないお店も多くあります。

Zoriana Zaitseva / Shutterstock.com

↑積極的に買い物客に商品を勧め、今月も売り上げナンバーワンを目指すやり手の女性店員(右)。

Salesperson 以外の店員たち

商品を買い物客に勧めて購入に至らせた salesperson に代わってレジで会計処理をしたり、商品についての専門知識がそれほど必要ではないその他の一般職の店員はアメリカで sales clerkstore clerk、イギリスでは shop assistant と呼ばれることが多く、ほぼ同じ意味で sales assistant がどちらの国でも使えます(以降の説明では分かりやすいようこの表現に統一します)。

先ほど説明したとおり私たち買い物客にはその店員の役職は分からないため、実際は sales assistant でも salesperson と表現することは別に問題ありません(本人もそう呼ばれると嬉しいと思います)。逆に本当は salesperson の人を sales assistant と呼ぶと、その人のプライドを粉々にしてしまうかもしれません。

salesperson を「販売員」とすると sales assistant は「販売アシスタント」となり、両者を合わせたものが sales staff になりますが、これは「販売スタッフ」のため「店員」とはまた違います(例えばスーパーの鮮魚コーナーで無言で魚をさばいているだけの人も「店員」です)。

なお、sales assistant と似ている sales associate はお店側が自分たちの販売スタッフを (上から目線にならないよう)「仲間 (associate)」と呼ぶ場合に使う表現で、お店の利用者側が使うものではありません。イギリスでも最近は retail associate といった表現が求人広告などで使われているようです。

sirtravelalot / Shutterstock.com

↑専門的な質問に答えられず、笑顔でごまかそうとするがやや表情が硬いバイトの男性。

「店員」の英語は意外と簡単

さて、ここまでの説明で多くの訳語を除外することができ、残されたのは次の3つだけになりました(併記している shop と store の違いについては #1 「お店」の shop と store の違いは何? で説明しています)。

shop/store employee
shop/store staff (member)
shop/store worker

この3つであれば、役職に関係なく shopstore と呼べるお店の「店員」に使えます。ただ、shop/store worker はその人の職業を説明するときに使うのが普通で、staff はスタッフ全体を意味する名詞のためスタッフ1人を表すときは shop/store staff member と表現がやや長くなることから、「店員」には shop/store employee (お店の従業員) を使うのがお勧めです。

なお、「お店」に該当する英単語は shop/store 以外にも restaurant/bar (飲食店)、agency (代理店)、dealership (特約販売店) などがあるため、お店の話だと分かる状況では単に employee と表現し、お店の従業員だということやお店の種類を明確にする必要がある場合などは shop/store employeesupermarket employeerestaurant employee のように表現するといいでしょう。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「店員」の英語訳の意味の違いが多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

もしどこかから「店員って英語で salesperson とか store clerk って言うんだよ」という声が聞こえてきたら、「ちょっと待ってください」と会話に割り込んでそのまま今回の内容を長々と説明してあげましょう。

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