オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第6回は「店員」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
Rudy van der Veen / Skitterphoto.com
↑AI化とキャッシュレス化で店員も現金も消えるかもしれないが、それでも「店員」は英語で何と言うか覚えておこう。
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「店員」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. sales assistant
2. sales associate
3. sales clerk
4. salesperson
5. sales staff
6. shop assistant
7. shop/store clerk
8. store employee
9. store staff (member)
10. store worker
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英語・英会話の情報ランド
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
教えて!goo
楽英学
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、主な訳語だけでもこれだけの数になりました。これでは一体どれを使えばいいか迷ってしまうと思います。なぜ1つの日本語に対してこれだけ多くの英語表現があるのでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった各表現の違いも含め、「店員」の英語について分かりやすく説明します。
Sales とは
まず、sales は「販売/売り上げ」や「営業」を意味します。この「営業」は「営業停止」などの「事業を営むこと」ではなく「営業担当者」の人たちが行う「販売・顧客獲得活動 (売り込み/セールス)」のことです。
「営業」は企業に売り込むこと、「販売」は消費者に直接売ることを意味するためデパートやスーパーでの仕事が「販売職」と説明しているウェブページもありますが、英語では(というより日本語でも)消費者に直接売ることは retail (小売り) 、相手が企業でも消費者でも「売ること/販売」は sales です(つまり販売職は小売業の内外どちらにも存在します)。なお、sales は「セールス」ではなく「セイルズ」のように発音します。
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↑日本では企業に営業部、販売部、マーケティング部の3つが存在する場合があるのに対し、英語では「営業」も「販売」も sales のため "Sales & Marketing" となっている。
Salesperson とは誰?
さて、売り上げや契約の件数が多ければ多いほど給料が増える歩合制の店員は、英語では salesperson と表現するのが最適です。日本語では「営業担当者」や「販売員」と呼ばれますが、「営業」という日本語はそもそも「事業を営むこと」に使うべきだと思いますので、以降ではこの salesperson は「販売員」と表現します。
目の前にいる店員が歩合制かどうかは私たち買い物客には分からないため、積極的に商品を勧めてくるような店員であれば salesperson と呼ぶことができます(「店長」などもっと適切な呼び名がない場合)。ただ、実際の会話で「店員」と言いたい場合にわざわざこの「販売員」という硬い表現を使うことはあまりありません。
男性と女性の販売員はそれぞれ salesman、saleswoman と呼べますが、名前も顔も知らない人の場合や求人広告で男女両方に該当する条件の場合はどちらかの表現だけを使うと差別となるため、今は salesperson (複数形は普通は salespeople) と表現するのが普通です(これらはどれも2語に分けて書く人もいます)。
なお、外回りでセールスをする訪問販売員なども salesperson と呼ばれるため、この単語は「店員」を意味するとは限りません。また、もちろん salesperson と呼べるような店員が全くいないお店も多くあります。
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↑積極的に買い物客に商品を勧め、今月も売り上げナンバーワンを目指すやり手の女性店員(右)。
Salesperson 以外の店員たち
商品を勧めて購入に至らせた salesperson に代わって会計処理をしたり、商品の専門知識がそれほど必要ない一般の店員はアメリカで sales clerk や store clerk、イギリスでは shop assistant と呼ばれ、ほぼ同じ意味で sales assistant がどちらの国でも使えます(以降では分かりやすいようこの表現に統一します)。
先ほど説明したとおり私たち買い物客にはその店員の役職は分からないため、実際は sales assistant でも salesperson と表現することは別に問題ありません(本人もそう呼ばれると嬉しいと思います)。逆に本当は salesperson の人を sales assistant と呼ぶとその人のプライドを粉々にしてしまうかもしれません。
salesperson を「販売員」とするとこの sales assistant は「販売アシスタント」になり、両者を合わせたものが sales staff ですが、これは「販売スタッフ」を意味するため「店員」とはまた違います(例えばスーパーの鮮魚コーナーで無言で魚をさばいているだけの人も「店員」です)。
なお、sales assistant と似ている sales associate はお店側が自分たちの販売スタッフを (上から目線にならないよう)「仲間 (associate)」と呼ぶ場合に使う表現で、お店の利用者側が使うものではありません。イギリスでも最近は retail associate といった表現が求人広告などで使われているようです。
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↑専門的な質問に答えられず笑顔がやや硬いバイトの男性。
「店員」の英語は意外と簡単
さて、ここまでの説明で多くの表現を除外することができ、残されたのは次の3つになりました(併記している shop と store の違いは #1 『お店』の shop と store の違いは何? で説明しています)。
shop/store staff (member)
shop/store worker
この3つであればどの職務でも shop や store と呼べるお店の「店員」に使えますが、shop/store worker はその人の職業を説明するときに使うのが普通で、staff はスタッフ全体を意味するため1名は shop/store staff member と表現がやや長いことから、「店員」には employee (従業員) を使うのがお勧めです。
なお、「お店」の英語は shop/store 以外にも restaurant/bar (飲食店)、agency (代理店)、dealership (特約販売店) などがあるため、お店の話だと分かる状況では単に employee と表現し、オフィスなどではなくお店の従業員だということを明確にしたい場合やお店の種類を明確にしたい場合は shop/store employee、supermarket employee、restaurant employee のように表現するといいでしょう。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「店員」の英語表現の違いが多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。
もしどこかから「店員は英語で salesperson とか store clerk って言うんだよ」という声が聞こえてきたら、「ちょっと待ってください」と割り込んで今回の内容を長々と説明してあげましょう...