オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第168回は「タイツ」「(パンティー)ストッキング」「レギンス」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
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↑「ストッキングの中にプレゼント入ってるかなー」(あれ? それはストッキングではない気が...)
まず、似ているようで違う「タイツ」と「ストッキング」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでそれぞれどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. base layer
2. inner legging
3. leotards
4. long johns
5. long underwear
6. tights
インターネット上の主な英語訳
1. pantyhose
2. (sheer) stocking(s)
3. (sheer) tights
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Naomi先生と楽しく実践力アップ!
Otona Salon
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、いろいろな訳語が見つかりました。「タイツ」の英語は tights が圧倒的に多く見つかりましたが、冬に下着として履く足首までの長さのタイツも本当に tights と呼んでいいのでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現やストッキングの「伝線」のアメリカとイギリスでの表現の違いも含め、「タイツ」「ストッキング」「レギンス」の英語について分かりやすく説明します。
Tights, Pantyhose
まず、肌に密着する下半身用の衣服は下着と下着以外(外から見えるもの)に分けられます。そして下着以外で腰からつま先まですべて覆っているタイプには全くまたはほぼ透けていない「タイツ」と薄くて透けた「パンティーストッキング (パンスト)」があり、この「タイツ」は英語でも tights と表現します。
形容詞の tight (きつい/タイト) を名詞にしたこの tights は pants/trousers (ズボン) などと同じく両足で履くため1着でも複数形で使い、these tights と表現するか1着だと明確に分かるようにしたい場合は this pair of tights と表現します(ただし少なくともアメリカのファッション業界では両足で履くものでも例えば these pants ではなく this pant のように単数形で表すのがかっこいいと考えられています)。
この tights は中世の頃と違って今はバレエダンサーや曲芸師を除いては女性が履くのが普通で、足首から先がない稀なタイプは footless tights と表現できますが、スカートの下に履くのではなくズボンとして履ける厚手のタイプは後で説明する leggings (レギンス/レギンズ) と呼ばれています。
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↑肌に密着する下半身用の衣服のうち、下着ではなくつま先まですべて覆っていて全くまたはほぼ透けていないこれらのタイプが tights(ただし上半身の一部と下半身の足首までを覆うサイクリング用タイツなどにもこの単語は使われる)。
一方、同じくつま先まである(またはつま先や稀に足首から先がない)タイプで薄くて透けた「パンティーストッキング」はアメリカでは pantyhose と呼ばれますが(ただし stockings と呼んでしまう人も多い)、イギリスではこれも tights です。つまりイギリスではタイツとパンストを区別しないわけですが、どうしても区別したい場合は sheer tights (透けたタイツ) と表現できます(逆に透けていないものは opaque tights)。
この tights も pantyhose も最初から複数形の「複数名詞」のため(正確には pantyhose に単数形はありません)、1着を these pantyhose や this pair of pantyhose と表現します。
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↑普通はナイロン製で薄くて透けた「パンティーストッキング」はアメリカでは pantyhose (2語に分けたままの panty hose やほとんど使われない pantihose というスペルもあり)。イギリスではこのタイプも tights と呼ぶので注意しよう。
ストッキングの「伝線」もアメリカが run (走り) でイギリスが ladder (はしご) と表現が違い、例えば「パンストが伝線した」と言いたければ "I('ve) got a run/ladder in my pantyhose/tights" と表現します。この ladder は「伝線させる」という動詞としても使えるため、イギリスでは "I('ve) laddered my tights" と表現することもできます(片足だけ伝線しても衣服としては左右一体のため複数形)。
Stockings, Thigh Highs, Hold Ups, Stay Ups, (Over The) Knee Highs
次は、つま先から股 (もも) や膝 (ひざ) までしかないタイプのストッキングについてです。
つま先から股までのタイプは2種類あり、ずれ落ちないようにストラップで吊るタイプはアメリカでもイギリスでも stockings (ストッキング) です。この stocking は可算名詞 (数えられる名詞) のため、通常の両足用は tights と同じく s を付けて1着を these stockings や this pair of stockings と表現します。
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↑股までの高さのストッキングのうち、ストラップで吊ってずれ落ちないようにするこのセクシーなタイプが stockings。
一方、ストラップで吊らなくてもずれ落ちないタイプはアメリカでは thigh highs (股の高さのもの)、イギリスでは hold ups (落ちずに持ちこたえるもの) や stay ups (落ちずに留まるもの) という表現が主に使われます。これらはどれも thigh-high stockings のように本来は形容詞ですが、stocking の部分を省いて名詞として使われ、少なくともアメリカではハイフンも省いて thigh highs と書くのが普通です。
そしてどちらの国でも膝の少し上までのものは over(-)the(-)knee(-)highs (日本では「オーバーニー」)、膝の少し下までのものは knee(-)highs (日本では「ニーハイ」) と表現できますが、knee(-)highs は靴下やブーツにも該当する表現です。なお、股またはそれ以下の高さのストッキングを日本では「セパレートストッキング」と呼ぶようですが、英語の stockings はもともと左右に分かれているので separate は不要です。
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↑これは thigh highs (アメリカ) や hold ups (イギリス) それとも over the knee highs?
その他、網タイツ/ストッキングは漁網に似ていることから fishnet tights/stockings、冒頭の写真のクリスマスの長靴下は日本では「ストッキング」とは呼ばないと思いますが、英語では Christmas stocking(s) と呼ばれています(片足のものを1つだけぶら下げている状態であればもちろん単数形)。
Long Underwear/Johns, Thermal Underwear, Base Layer, Leggings
最後は、腰から足首(または脛 (すね) 辺り)までの長さで透けていないタイプについてです。
日本ではこのタイプの下着も「タイツ」(または昔ながらの男性用のものは「ももひき」) と呼びますが、英語では long underwear、long johns、thermal underwear、base layer などの表現が使われます。
どの表現を使うかは人や状況によって違い、例えばイギリスのCollins英英辞書とOxford英英辞書でアメリカ/北米英語と説明されている long underwear (長い下着) は上半身用にも使う人はいたり、面白い/やや古い表現と感じる人が多い口語の long johns (語源には複数の説あり) は今挙げた2つの辞書では下半身用と説明されていますが、やはり上半身用にも使う人はいます(男性風の表現ですが女性でも使う人はいます)。
それならば明確に下半身用と分かる long underpants (長い(下着の)パンツ) と表現すればいいように思えますが、long underwear/johns を下半身用の意味で使う人が多いからかこの表現はあまり見られません。
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↑このような足首までの長さの下着のタイツを英語でも tights と呼ばないよう注意しよう。
一方、thermal underwear (保温性が高い下着) という表現は通常のタイプにも使う人と保温性が高いタイプだけに使う人に分かれますが、通販サイトでは男女とも長袖・長ズボンの下着のカテゴリーに long ~ ではなくこの thermal underwear や名詞化した thermals が多く見られ(恐らく今は保温性が高い商品が多いから)、thermal top/bottoms/set (上半身用/下半身用/上下セット) と小分けしている例もあります。
そしてスポーツ選手、アウトドア派、軍人たちが一番内側に着るタイプには base layer (または inner layer) という表現が使われ、日本でもこれを「ベースレイヤー」と呼ぶようです。このタイプにも上半身用があるため、下半身用ということを明確にしたい場合は base layer bottoms と表現します。
その他、ズボンやスカートの下に履くのではなくそれ自体を運動用やおしゃれ用のズボンとして履けるタイプが leggings で、日本では主に「レギンス」や「レギンズ」と呼ばれています(英語の発音は「レギングズ」ですが、「グ」は小さく聞こえ、最後の「ズ」はどちらかというと「ス」に聞こえます)。
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↑日本で「レギンス」や「レギンズ」と呼ばれる leggings は普通は女性用(男性でも履く人はいる)。
なお、underwear は不可算名詞 (数えられない名詞) のため、例えば long underwear は1着を this long underwear と表現します。一方、bottoms と leggings は複数名詞 (最初から複数形の名詞) のため、1着を these thermal bottoms や this pair of leggings と表現します。
今回はいろいろな表現が出てきましたが、通販サイトの商品名の場合は検索時にヒットしやすいよう類似表現を詰め込んでいることが多いため、そのタイプの一般的な呼び名を通販サイトの商品名から判断しないほうがいいと思います(例えば男性用の下着のタイツでも leggings と表現している商品もあります)。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「タイツ」と「ストッキング」の英語表現の違いが分かりやすくなったかもしれません。
今回調べた辞書・サイトで「タイツ」の英語に thermal (サーマル) という単語を使った表現や「ストッキング」の英語に thigh highs、hold ups、stay ups などを載せているものはありませんでしたので、少なくとも辞書は載せておくべきでしょう。