#45 「旅行する」の英語は本当に travel や go on a trip?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第45回は「旅行」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

Priscilla Du Preez / Unsplash.com

↑「旅行」の英語といえば travel や trip。このページの内容を読んでもまだそう思う?


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「旅行する」というフレーズはどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

「旅行する」
インターネット上の主な英語訳
1. go on a journey/trip
2. journey
3. make a journey/trip
4. take a journey/trip
5. travel
訳語が見つかった辞書・サイト
bab.la(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?

英辞郎 on the WEB(辞書)
英会話|アルク
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Hapa Eikaiwa 英語学習コラム
実用・現代用語和英辞典(辞書)
MYスキ英語
Reverso Context(辞書)
わたしの英会話 b-cafe.net
weblio(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「旅行する 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、「旅行する」の英語としてよく知られている単語・フレーズが見つかりました。これらの表現は実は別の単語・フレーズを足さないと「旅行する」の意味にはならないと言われたら驚くでしょうか?

以下では、今回訳語が見つかった辞書・サイトで見落とされていた点も含め、「旅行」の英語について分かりやすく説明します。

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旅行 ≠ 旅をすること

まず、例えば海外出張が多い会社に勤めている友人が「先月、インドに旅行に行ってきた」と言ったら、あなたはそれが出張だったとは思わないはずです。なぜなら、「旅行」という言葉は国語辞書では「旅をすること」のようにしか定義されていないものの、普通は観光や気分転換など「楽しむための旅」や「余暇の旅」を意味するからです。もし出張だったのであれば、「出張(または仕事)でインドに行ってきた」と言うはずです。

あまり使う表現ではありませんが、「ビジネス旅行」や「出張旅行」と言えばそれが仕事だったことを意味するのに対し、単に「旅行」と言うと今説明した「楽しむための旅」や「余暇の旅」を意味するのが普通です。これは、例えば「出張でも旅行でも」のようなフレーズがよく使われることからも分かります。

Daxiao Productions / Shutterstock.com

↑「もしもし、課長ですか? 今もう旅行に出かけるところなんですが...」「おい君! これは遊びじゃなくて仕事だぞ!」

また、例えば遠方への出張から疲れて帰ってきた友人が「すごく疲れる旅だった...」と言っても違和感がないのに対し、「すごく疲れる旅行だった...」と言うと「仕事じゃなかったの??」と聞きたくなってしまうことからも、「旅行」と「旅」は違う意味で使われていることが分かります。

Journey, Travel, Trip は「旅行」ではない

journeytraveltrip にはこのような「旅行」の意味はなく、それぞれ距離などが多少違うだけで基本的にはすべて単に「ある場所から別の場所に行くこと」を意味します。例えば、"I made a trip to the shop" と言えば単に少し離れたお店に行ったことを意味し、"I'm travelling to the office" と言えば単にそれなりに時間のかかるオフィスまで行くことで、どちらも旅行のように楽しむことを意味する表現ではないのです。

もし絶対に出張のない人が "I made a trip to X" や "I travelled to X" の X の部分に「旅行」と呼べるほど離れた場所を言えばそれは旅行の可能性が高いですが、絶対に出張がないことをあなたが知っているからそう推測するだけで、これらの英語フレーズ自体に「旅行」の意味があるからではありません。また、出張は絶対にないとしても、例えば被災地ボランティアや葬儀参列など「旅行」とは呼べない旅だった可能性もあります。

Mantas Hesthaven / Unsplash.com

↑亡くなった友人の葬儀に参列するために故郷へ travel する男性。彼にとってこれは「旅行」ではない。

なお、journey という単語は普通の旅行には使わないと言う人もいるため、以降では traveltrip に限定して説明を続けます。また、アメリカでは travelingtraveled のように l が1つのスペルが普通ですが、イギリスなどと同じように2つ書く人も多いため以降の説明でも -ll- と表記しています。

「旅行」は英語で何と言う?

では、「旅行」は英語で何と言うのでしょうか? これは遠くから訪れている人に対して「こちらへはお仕事ですか? それともご旅行ですか?」 と尋ねる "Are you here for business or pleasure?" という慣用表現を考えると分かります。この "business or pleasure" は英和辞書などで「仕事または遊び」や「仕事または楽しみ・娯楽」と訳されていますが、この「遊び・楽しみ・娯楽」という日本語は何か変ではないでしょうか?

例えば、あなたの住む地域を訪れてきた人に対してあなたは「こちらへはお仕事ですか?」に続けて「それともお遊びですか/お楽しみですか?」と尋ねるでしょうか? 自然な表現では「それとも休暇ですか?」がありますが、pleasure は「喜び」や「楽しみ」であって「休暇」ではありません。「それとも観光ですか?」も自然な表現ですが、そこが観光地でなければやはり「それともご旅行ですか?」と尋ねるのではないでしょうか?

つまり、英和辞書などが「遊び」や「楽しみ・娯楽」という不自然な表現を使っている理由はこの「プレジャー目的の旅 (=楽しむための旅)に該当する自然な漢字表現がないからで、そのために私たちは「(出張なども含め) 旅をすること」を意味するはずの「旅行」という言葉を代わりに使っていると考えられます。

oneinchpunch / Shutterstock.com

↑「こちらへはお仕事ですか? それともお遊びですか?」「えーと......ちょっとした旅行です」

「旅行」という日本語は「楽しむための旅」や「余暇の旅」を意味するのが普通と先ほど説明しましたが、この「楽しむための旅」という意味での「旅行」を表す自然な英語は今説明した内容から考えると travelling for pleasure だと言えます。では、「余暇の旅」という意味での「旅行」は何と表現するのでしょうか?

ここまでの説明で「休暇」ではなく「余暇」という言葉を使ってきた理由は、例えば午前中だけ仕事をして午後に強引に日帰り旅行をした場合など、丸一日休まなかった場合に「休暇」という言葉があまり適切に感じないためです(半日だけ有給の「休暇」を取ることもできますが)。そしてこの「余暇」に該当する英単語は leisure のため、「余暇の旅」という意味での「旅行」は travelling for leisure だと言えるでしょう。

なお、日本語の「レジャー」は行楽や娯楽施設に出かけて楽しむことを意味するのが普通のため、recreationactive leisure と表現するほうが適切です。一方、英語の leisure は単に「余暇 (=仕事などから解放された時間)」という意味のため、家でのんびりとリラックスしてテレビを見る時間などにも該当します。

Jan Vasek / JESHOOTS.com

↑自宅でサッカー中継を見ながらのんびりとリラックスするレジャー中の人。

さて、これで「旅行」を英語で正しく表現するには pleasure または leisure という単語が必須と言えそうですが、ネイティブスピーカーは旅行をした際に "I travelled to X for pleasure/leisure" とは普通言わないのはなぜでしょうか? 理由は、英語では旅行を次の2つに分けて考え、これから説明するようにそれぞれにおいて pleasure や leisure という単語を使わずに「旅行」を表現できてしまうからです。

A. 日帰りや週末(+祝日)の旅行など、数日以内の「短い旅行」(通常3~4日以内)
B. Aには該当しない「長めの旅行」(通常1週間程度以上)

このカッコ内の日数はあくまで目安のため、以降でも「数日」という曖昧な表現を使います。

A. 短い旅行

さて、数日以内の短い旅の場合は「日帰りの」「1泊2日の」「週末の」「短い」などを意味する単語を trip の前に付けて次のように表現するだけで (仕事などではなく)「旅行」と解釈されるのが普通です。

1. I went on a day/two-day/weekend/short trip to Kyoto last week.
(先週、京都に日帰りの・1泊2日の・週末の・短い旅行をしてきました。)

この trip を使った「旅をする」という意味の go on a tripmake a triptake a trip のニュアンスの違いなどについては、他の英語学習サイトなどで説明されているのでそちらをご覧ください。

B. 長めの旅行

数日以上の長めの旅の場合は、最初のインドへの旅行であれば "I went on a trip to India last month""I travelled to India last month" と表現するだけでは期間だけでなく目的(旅行、仕事、その他)も分からない表現になってしまいます(つまり、これらは単にそこまで旅をしてきたことを伝えたいときに使う表現です)。そのため、その旅が「長め」で「旅行」だったことを伝えるには次のように表現します。

2a. I went on vacation to India last month.(アメリカ英語)
2b. I went on holiday to India last month.(イギリス英語)
(先月、休暇で何日間かインドに行ってました。)
3a. I went to India on vacation last month.(アメリカ英語)
3b. I went to India on holiday last month.(イギリス英語)
(同上)

土日祝の「祝日」の意味も持つ holiday という単語はここでは「自分が住む地域を数日以上離れて息抜きや旅行をする期間」という別の意味で、アメリカではこれを vacation と呼びます。この「旅行をする」の部分は現地での(または現地から別の地域への)旅行のことですが、現地で旅行せずに息抜きだけして帰ってきた場合でも「旅行」です(以降ではこの vacation/holiday と呼ばれる期間を単に「休暇」と表現します)。

つまり、英語には vacation/holiday という「休暇」を意味する単語があるため、travel/trip や先ほどの pleasure/leisure を使わずに「go + on vacation/holiday」と表現するだけで「長めの旅行」を表現できてしまいます。3a/3bのように "on vacation/holiday" (休暇で) の部分を地名の後にも置けますが、2a/2bのように "go on vacation/holiday" (休暇の旅に出る) というフレーズで使うほうが多いと思います。

この「休暇の旅」を vacation trip または holiday trip、最初に説明した「楽しむための旅」と「余暇の旅」を pleasure trip と leisure trip と表現するとそれぞれ日本語の「旅行」とほぼ同じ意味になりますが(つまり、日本語の「旅行」は部分的に意味が重なるこの3つのタイプの旅行の総称とも言えます)、これらの表現は文中で使うにはあまり自然ではないためここまでの例文のように表現するほうがいいでしょう。

今回調べた辞書・サイトで「旅行する」の訳語にこの vacationholidaypleasureleisure のいずれかの単語を使っているものは1つだけでした (『DMM英会話なんてuKnow?』の回答者1名)。

Rawpixel / Rawpixel.com

↑休暇の旅先で遭難し、救助隊のヘリに手を振る女性2人。

旅行ではなく仕事の場合

では、その旅が「旅行」ではなく「出張」など仕事だった場合はどう表現すればいいのでしょうか?

先ほどの例文1の京都への日帰りの旅が旅行ではなく仕事だった場合は、「a + 期間 + trip」の trip の直前に business を入れて次のように表現します(ただし "day" を "one-day" に変える必要があります)。

4. I went on a one-day business trip to Kyoto last week.
(先週、仕事で京都に日帰りで行ってきました。)

一方、例文2と3のインドへの長めの旅が仕事だった場合は、例えば3a/3bの on vacation/holiday の部分を on business に変えて次のように表現すると単に仕事でインドに行ってきたという意味になってしまい、日帰りの出張など短い旅にも該当してしまいます(インドへの日帰りの出張は距離的に不可能ですが)。

5. I went to India on business last month.
(先月、仕事でインドに行ってきました。)

旅の期間が重要ではない場合はこの「go to + on business」というシンプルな表現で十分ですが、期間も伝えたい場合は上の例文4のようにやはり「a + 期間 + business trip」で表現することになります。

6. I went on a two-week business trip to India last month.
(先月、仕事で2週間インドに行ってました。)

Go と Travel のどちらを使うべき?

trip を使わなかった例文2、3、5では動詞に travel ではなく go の過去形の went を使いましたが、これは to の後に遠い場所が続けばそれだけでそこまで「旅」をした意味になるからです。もし「旅」をしたことに重点を置きたければ "I travelled to..." と表現してもいいですが、単にそこまで行ってきたことを伝えたいのであれば "I went on vacation/holiday to X""I went to X on business" と表現するのが普通です。

一方、現地まで旅したこと(行ってきたこと)ではなく現地で旅をしたことを伝えたければ travel を使い、前置詞を to から in に変えてインドであれば "I travelled in India" と表現します。そして現地でいろいろな場所を旅して回ったのであれば、前置詞を around に変えて "I travelled around India" となります。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「旅行」という日本語の意味や適切な英語訳が多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

もし知り合ったばかりの外国人に "I'm travelling to Kyoto next week" と言われても、いくら仕事で疲れているからといって "I need a break too" などと言ってしまわず、まずはそれが「旅行」かどうかを確かめるために "Business or pleasure?" と尋ねるのがいいでしょう。

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