オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第63回は「タッパー」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
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↑つい「タッパー」と呼んでしまうこのような容器。和英辞書はどう英語に訳してる?
まず、主に食品の保存に使われる容器の「タッパー」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. plastic container
2. plastic container usually for food (from Tupperware)
3. Tupperware
あたしmyself
bab.la(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
Glosbe(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
カタカナ英語のウソ・ホント
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
WebSaru(辞書)
※容器のタッパーとは関係ない tapper や人名の Tupper のみを訳語に載せていた辞書・サイトは一覧に含めていません。
ご覧のとおり、主に3つの訳語が見つかりました。この中にタッパーという容器を正確に表しているものはあるのでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「タッパー」の英語について分かりやすく説明します。
「タッパー」とは
まず、「タッパー」とはアメリカのタッパーウェア社が製造するプラスチック容器の商品名「タッパーウェア」を略した言葉ですが、英語ではそのように略すことはないため、上の主な訳語にも含まれている Tupperware が正しい英語訳です(例えばタッパー1つは "a Tupperware container" と表現できます)。
ただ、私たちはタッパーウェア社以外の同じような容器も「タッパー」と呼んでしまうため(実際にこのブログでも #8 『弁当』の英語は本当に box(ed) lunch や packed lunch? でそう呼んでしまっています)、同社の製品を含むこれらの容器の正確な英語表現も和英辞書は載せておくべきでしょう。
タッパー ≠ Plastic Container
今回見つかった主な訳語に含まれている plastic container は、単に「プラスチック容器」を意味するためスーパーで "Where can I find plastic containers?" と尋ねる場合などは確かにタッパーを意味します。一方、例えば "Plastic containers, such as water bottles and takeout/takeaway containers..." (水を入れるボトルやテイクアウト用の容器などプラスチック容器は...) という文ではタッパーを意味しません。
また、プラスチック製の密閉容器の総称を意味すると説明しているページもありますが、container は密閉式とは限らないため、例えば蓋のないゴミ箱、バケツ、カップなどもプラスチック製であれば該当します。
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↑ペットボトルもプラスチック製のゴミ箱も plastic container の一種。
何を入れる容器なのか
さて、タッパーには普通は食べ物を入れますが、今回見つかった主な訳語に含まれている plastic container usually for food という表現はあまりにも説明的で不自然ではないでしょうか?
そこでシンプルに plastic food container (食品用のプラスチック容器) と表現したいところですが、これだけでは状況によってはスーパーで果物やお惣菜が入っているプラスチック容器などにも該当してしまいます。
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↑食品用のプラスチック容器に入ったイチゴ。
入れた食べ物をどうするのか
タッパーは弁当箱としても使えますが、普通は食べ物を冷蔵庫などに保存するのに使うため、「保存」を意味する storage という単語も使うのがいいでしょう。この単語はパソコンなどの「ストレージ」(データを保存する記憶装置) にも使われますが、英語の発音は「ストーリッジ」に近いので注意が必要です。
つまりタッパーを明確に意味するシンプルな英語表現は plastic food storage container になり、実際にこの表現を食品保存用のプラスチック容器に使っているウェブページがいくつも見られます。
これで十分かと思いましたが、英語版ウィキペディアでタッパーの発明者 (Earl Tupper) のページを見たところ、タッパーが "airtight plastic container for storing food" と表現されていました(正確で自然な表現です)。気密性が高いことを意味するこの airtight という単語を先ほどの表現に加えると airtight plastic food storage container になりますが、普通はここまで正確に表現する必要はないでしょう。
なお、本体部分がガラス製の場合は plastic を glass に変えればいいだけです。ガラス製でも「タッパー」と呼ぶのかは分かりませんが、他に簡単な呼び名がなければそう呼んでしまう人は結構いると思います。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した食品保存容器の正確な表現が「タッパー」の英語として多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。
今回の説明では「タッパー」という言葉を使いましたが、やはりタッパーウェア社の容器だけをそう呼ぶほうが同社も喜ぶと思います。そこで今後は同社以外の製品については「フードストレージコンテナ」と呼ぼうではありませんか(いや普通に日本語で「食品保存容器」と呼びましょう...)。