オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第115回は「売り場」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
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↑いろいろな商品の売り場があるスーパー店内。さて「売り場」は英語で何と言う?
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「売り場」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. aisle
2. counter
3. department
4. place where things are sold
5. point of sale (POS)
6. sales floor
7. salesroom
8. section
9. selling area
10. stand
bab.la(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
日刊英語ライフ
Reverso Context(辞書)
サバイバルイングリッシュ
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、主な訳語だけでもこれだけの数になりました。4番目の place where things are sold は「物が売られている場所」という説明的な表現としては使えますが、例えば「○○売り場」や「レジや売り場での接客」などの「売り場」に使えるシンプルで一般的な表現は一体どれでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「売り場」の英語について分かりやすく説明します。
「○○売り場」の「売り場」は英語で何と言う?
まず、上の訳語の中で「○○売り場」の「売り場」に使えるのは aisle、counter、department、section、stand の5つです。これらの違いは一体何でしょうか?
aisle はスーパー店内の商品棚の各列の通路のことで、例えば冷凍食品だけを陳列した通路は「冷凍食品売り場」として frozen food aisle と表現できます。一方、counter は店員がカウンター越しに接客する売り場、department はデパートなど大型店の中のカテゴリー別に独立した売り場 (デパートは多くの department で構成されているお店のため department store)、section はスーパーの各売り場に使えます。
そして例えばデパートでは "Where is the ○○ department?" (○○売り場はどこですか?) と尋ねることができ、○○の部分には food (食品)、furniture (家具)、men's/women's clothing (紳士服/婦人服)、shoe (靴)、stationery (文房具)、toy (おもちゃ) などが入ります。もちろん「売り場」に該当する名詞を使わずに "Where can I find cosmetics?" (化粧品売り場はどこですか?) のように尋ねることもできます。
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↑「cosmetics section はどこですかっ?」「ここはデパートだから cosmetics department って呼んでね」
なお、企業内の department (部門) とその中の section (課) の関係のように、例えば book department (書籍売り場) の中のベストセラーコーナーを bestseller section と呼べますが、そのような小さなセクションは日本語で「売り場」ではなく今の説明のように「コーナー」と呼ぶほうが普通だと思います(※section は単に「部分」という意味のため、必ずしも department より小さい部分を意味するわけではありません)。
stand は台の上に商品が載せられている売り場に使えますが、そのスタイルで売るお店の「売店」や「屋台」にも該当します。例えば、#37 『八百屋』の英語は本当に vegetable store や greengrocery? で登場した produce stand は「青果売り場」ではなく「青果を売る露店」を意味します。
売り場全体は英語で何と言う?
さて、特定の売り場ではなく、「レジや売り場での接客」のように商品を売るスペース全体としての「売り場」に使えるシンプルな表現はどれでしょうか?
今回見つかった主な訳語の中では point of sale (POS)、sales floor、salesroom、selling area の4つが使えそうに思えますが、このうち「売り場」として適切で自然な表現は sales floor だけです。ただ、sales は「販売」という意味のため、sales floor (または1語で salesfloor) は例えばオフィス内で営業担当が電話セールスなどを行う「営業フロア」の意味にもなり得ます。
また、似た表現として主にイギリスで使われる shop floor がありますが、この言葉はお店の売り場よりも工場の作業場やそこで作業する人たちに使われるほうが普通です。sales floor にしても shop floor にしても、実際の会話では sales/shop を省いて "We need more staff on the floor" (売り場にもっとスタッフが必要だ) や "I'm the floor manager" (私が売り場の責任者です) のように表現するほうが自然です。
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↑この人も floor (床) の上で働いているが、floor (売り場) のスタッフではない...
point of sale (POS) は #60 『POP広告 (スイングPOPなど)』は英語で何と言う? でも説明したとおり普通はレジカウンターエリアを意味し、salesroom は競売場 (saleroom) やショールーム (showroom) と誤解される可能性のある表現です。selling area の selling は sale(s) とほぼ同じ「売ること」ですが、「売り場」の表現としては今回調べた辞書・サイトが載せていなかった sales area のほうが自然です。
また、同じくどの辞書・サイトも載せていなかった表現として「販売スペース」を意味する retail space があります(retail は商品を消費者に直接販売する「小売り」を意味します)。つまり、単独の「売り場」の英語には (sales) floor、sales area、retail space のうち適切と感じる表現を使えばいいということです。