#34 「ユーザー」の英語は本当に user?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第34回は「ユーザー」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

MarleneBitzer / Pixabay.com

↑「20歳のときからスポーツカーに乗ってるのよ」と話すスポーツカーユーザー(?)


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「ユーザー」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

「ユーザー」
インターネット上の英語訳
user
訳語が見つかった辞書・サイト
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「ユーザー 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、訳語が見つかった辞書のすべてが「ユーザー」を user と訳しています。「ユーザー」は英語で何かと言えばそれは確かに user なのですが、英語では普通そう呼ばない場合でも日本語では「ユーザー」と表現されることがそれなりにあるため、その場合の英語表現も説明しておく必要があると思います。

以下では、「ユーザー」を user と表現しないほうがいい例とその理由を分かりやすく説明します。

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User は「使う人」

まず、「スマホユーザー」「SNSユーザー」「ユーザーネーム」など「ユーザー」という言葉は普段からインターネット上などで頻繁に使われています。そしてこの「ユーザー」はもちろん「使う人」を意味します。

パソコンやスマートフォンなどのハードウェア、アプリなどのソフトウェア、そしてさまざまなサービスは「使う」ものであり、これらの使用者または利用者を英語で user と表現するのは適切です。

「使う人」ではない人たち

では、例えば冒頭の写真の「スポーツカーユーザー」や同じくインターネットで検索すると出てくる「ワインユーザー」や「ヨーグルトユーザー」は本当に「ユーザー」なのでしょうか? 記事の内容から判断する限り、彼らは単にその車に乗ったりその飲食物を食べたり飲んだりする人のようにしか思えません。

念のため、この「ユーザー」の人たちになった気分で動詞の use を使って次の例文を作ってみました。

1. I've been using sports cars since I was 20.
(20歳のときからスポーツカーを使っています。)
2. I use about three bottles of wine each week.
(週に3本くらいワインを使います。)
3. I use yogurt every morning.
(毎朝ヨーグルトを使っています。)

1はスポーツカーを20歳のときから何かの目的で使ってきたという意味のため、その目的も一緒に説明しないと何のことなのかよく分かりません。もし単に20歳のときからスポーツカーに乗っている(運転している)と言いたいのであれば、using ではなく driving と表現するのが普通です。

同じく2と3も何かの目的でワインやヨーグルトを使っていることを意味します。例えばワインであれば料理に使ったり、ヨーグルトであれば顔に塗るヨーグルトパックかもしれません。もし単にワインを飲んだりヨーグルトを食べたりする習慣について説明したいのであれば、当たり前ですが英語ではそれぞれ drinkeat と表現します(consume も同じ意味ですが、少し硬い表現です)。

bruce mars / Pexels.com

↑「あたしのこと『ワインユーザー』って呼ぶ人いるんだけどさー、ただ飲んでるだけなのよね~」と話す女性。

運転する人、食べる・飲む人

車を運転する人は英語で car driver(所有者であれば car owner)、何かを飲む人は ○○ drinker または ○○ consumer(単に "drinker" と表現すると普通は「酒飲み」の意味になるため注意)、そして何かを食べる人は ○○ eater または ○○ consumer と表現するのが普通です。

例えば、赤ワイン(のポリフェノール)やヨーグルト(の乳酸菌など)を健康維持やその他の目的で「使っている人たち」と表現したいのであれば red wine usersyogurt users と表現してもいいのかもしれませんが、薬やサプリメントと違ってこれらは飲食物のためやはり red wine drinkersyogurt eaters と表現するほうが自然です(people who eat yogurt のように表現するほうがもう少し自然です)。

履く人

さて、このような「ユーザー」の使い方はアパレル/ファッション系のウェブサイトでも見られ、例えばジーンズを履く人たちのことを「ジーンズユーザー」と表現したりします。この場合も英語では jeans wearers と表現するほうが自然です。

同じくスニーカーを履く人たちも「スニーカーユーザー」と表現したりしますが、やはり英語では sneaker wearers(イギリスであれば trainer wearers)と表現するほうが自然です。

Sarah_Loetscher / Pixabay.com

↑スニーカーを植木鉢として使うこの人こそ「スニーカーユーザー」なのかもしれない。

なぜ「ユーザー」が好んで使われる?

「ユーザー」という言葉はパソコン/スマートフォンやいろいろなサービスの説明などで頻繁に使われるためか、ここまで説明してきたようなものにまで無意識に使われるようになってしまいました。

この傾向は特にマーケティング系のウェブサイトで多く見られ、英語圏でもそのようなサイトの中には先ほどのような人たちを users と表現しているものがありますが、英語圏でもマーケティング業界の人たちは「少し変わった表現をする人たち」と思われていることを覚えておきましょう。

また、日本人はどうも言葉の意味よりも「響き」を優先してしまうらしく、「ドリンカー」「イーター」「ウェアラー」「コンスーマー/コンシューマー」などは言いづらかったり響きが悪いと感じてしまうため、使い慣れていて耳に心地よい「ユーザー」を使ってしまうのだと思います(車の「ドライバー」や「オーナー」は心地よい響きのためかニュースなどでよく耳にします)。

このような場合はわざわざ格好つけてカタカナを使わず、「飲む人/食べる人」「着る人/履く人」「消費者」のような意味的に適切かつ分かりやすい表現を使うほうがいいでしょう。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで今後は「ユーザー」という言葉を気軽に使えなくなってしまったかもしれません。

マーケティング関係のお仕事をされている方は、例えば「カップラーメンヘビーユーザー」のようにすべてカタカナで表現せず、格好悪くても構わないので「カップラーメンをたくさん食べる人」のように普通の日本語で表現するか、「カップラーメン大量消費者」のように表現すると日英翻訳者が複雑な気持ちにならずに済むでしょう。

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