※「八百屋」や「青果店」ではなく「青果(物)」の英語を検索された方は↓のページをご覧ください。

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第37回は「八百屋/青果店」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
Bruce Mars / StockSnap.io
↑客が誰も来なくなった八百屋。近所に大型スーパーでもオープンしたのだろうか?
まず、青果(野菜と果物)を売るお店の「八百屋」や「青果店」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. fruit and vegetable shop/store
2. greengrocer / green grocer
3. greengrocer's (shop)
4. greengrocery
5. produce market
6. vegetable shop/store
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
eigonary(辞書)
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
HiNative
Imagict(辞書)
Linguee(辞書)
楽英学
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、似たような訳語がいくつか見つかりました。この中のどれが「八百屋/青果店」の英語として最も一般的なのでしょうか? vegetable store と greengrocery を主な訳語として載せている辞書・サイトがいくつかありましたが、残念ながらこれらの表現は一般的ではありません。
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった情報も含め、「八百屋/青果店」の英語について分かりやすく説明します(※以降の説明では「青果店」よりも一般的な呼び名の「八百屋」に表現を統一します)。
アメリカで八百屋は一般的ではない
まず、日本と違ってアメリカでは八百屋というものが一般的ではありません。例外地域はあるようですが、消費者の多くがスーパーや食料雑貨店で青果を買うため八百屋の必要性が低く、採れたての新鮮な青果が欲しい場合はその時期に設置される次の2つの場所で入手することができるからです。
2. 農家自身が農産物を消費者に直接販売する市場 ⇒ farmer's market
1の produce は「青果」を意味する名詞で、例えばスーパーの青果売り場/青果コーナーは fruit(s) and vegetable(s) section よりも produce section と表現するほうが普通です。
この1の売店は年中営業する日本の屋内のお店である八百屋とは違いますが、青果だけを売るお店のため八百屋と言えると思います。ただ、このような売店がすべて produce stand と呼ばれるわけではなく、(fruit and) vegetable stand と表現されたり、果物を主に売っている場合は fruit stand と呼ぶのが普通です。
Arina P Habich / Shutterstock.com
↑produce という名詞は「青果」を意味するのが普通(穀類や肉なども含む「農産物」の意味で使われることもある)。
一方、2は各農家が集まって青果または穀類・肉なども販売する市場 (いちば) ですが、年中営業する珍しいタイプの屋内の八百屋の中には同じく farmer's market と名乗るものがあるため、それと混同しないよう注意が必要です。なお、今回見つかった主な訳語に含まれている produce market も同じような市場の意味ですが、表現としては一般的ではありません。
martinclark / Pixabay.com
↑垂れ幕に "fresh market" の文字があるものの、これはスーパーの青果売り場であって本物の「市場」ではない。
イギリスでも八百屋の数は多くない
イギリスでも多くのスーパーの出現によって八百屋の数は減りましたが、アメリカと違って greengrocer's という一般的な呼び名が存在します(アポストロフィーなしの greengrocer も可)。これは greengrocer's shop の略で、分かりやすい日本語にすると「野菜類を仕入れて売る人のお店」です(野菜類を仕入れて売る人は日本語で「青物商人」のため、この greengrocer と表現が一致します)。
青物商人が複数名いる八百屋は greengrocers' と表記すべきなのか、複数の八百屋は greengrocers' なのか greengrocers でいいのかなど迷いそうですが(greengrocers または greengrocer's shops をお勧めします)、この greengrocer's という言葉のせいで greengrocer's apostrophe というアポストロフィー誤用現象(リンゴ3つを three apple's と書いてしまうなど)が発生したことも覚えておきましょう。
今回調べた辞書・サイトで「八百屋/青果店」の英語に greengrocer's を載せているだけでなく、それが主にイギリスで使われている表現だということまで補足しているものは3つだけでした(『英辞郎 on the WEB』『goo』『Weblio』)。また、イギリスでの主な表現として greengrocery を載せているものがいくつかありましたが、イギリスでこの単語が八百屋の意味で使われることはまずありません。
blueprint2015 / Pixabay.com
↑いつ雨が降っても大丈夫なように巨大傘が設置されている(さすがイギリス)。
日本の八百屋は英語で何と表現する?
最後に、日本の八百屋は英語で何と表現すればいいのでしょうか? 実はアメリカやカナダでも八百屋のことを greengrocer と呼ぶ地域はあり、オーストラリアでもイギリスと同じく greengrocer's が一般的な表現のため、出身国不明の相手に英語で説明するときはとりあえず greengrocer を使うのがいいでしょう。
最初からアメリカ出身だと分かっている場合は、農家などから青果を仕入れてそのまま販売する普通の八百屋であれば produce shop よりも produce store と表現するほうが適切と言えるでしょう(この shop と store の違いは #1 『お店』の shop と store の違いは何? で説明しています)。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「八百屋/青果店」のアメリカとイギリスでの表現の違いが多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。
このページを読んで店頭に "Greengrocer" と書きたくなってしまった八百屋さんもいると思いますが、店頭の表示であれば "Fruit and Vegetable Store" のような英語圏以外の人にも分かりやすい表現を使うほうがいいでしょう(書かなくても店頭の商品を見ればすぐに八百屋だと分かりますが...)。